
テレワークやクラウドサービスの普及により、従来の「境界防御型」セキュリティの限界が露呈しています。「社内は安全、社外は危険」という古い考え方では、多様化するサイバー攻撃から企業を守れなくなっています。
そこで注目されているのが「ゼロトラスト」という新しいセキュリティの考え方です。「誰も信用せず、常に検証する」という原則に基づくこのアプローチは、中小企業のIT管理者にとっても無視できない重要性を持っています。
しかし、ゼロトラストという言葉は聞いたことがあっても、具体的に何をすればよいのか、自社に本当に必要なのか判断に迷っている方も多いのではないでしょうか。
当記事では、ゼロトラストの基本概念から導入メリット・デメリット、さらに中小企業でも実践できる段階的な導入方法まで、わかりやすく解説します。テレワーク環境のセキュリティ強化や、経営層への説明資料としてもお役立てください。
目次
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ゼロトラストとは?従来のセキュリティとの違いを分かりやすく動画で解説します。
1. ゼロトラストの基本概念と従来型セキュリティとの違い

ゼロトラストとは、「社内外を問わず、誰も信頼せず常に検証する」という新しいセキュリティの考え方です。テレワークの普及やクラウドサービスの活用が進む現代のビジネス環境において、従来の境界防御型セキュリティでは対応できない課題を解決するアプローチとして注目されています。
簡単に言えば、ゼロトラストは「社内ネットワークだから安全」という考え方を捨て、すべてのアクセスを信頼せず、常に検証を行うセキュリティモデルです。企業のIT責任者として、この概念を理解することは、組織全体のセキュリティ体制を強化する第一歩となります。
従来型セキュリティでは、社内と社外を明確に区別し、社内を「安全」とみなす考え方が主流でした。しかし、リモートワークの一般化や社内への持ち込みデバイスの増加により、この「内と外」の境界は曖昧になっています。ゼロトラストは、この新しい働き方に対応したセキュリティ体制を構築するための基本原則となります。
ゼロトラストを理解することで、限られた予算内でも効果的なセキュリティ対策を実施でき、経営層への説明もより説得力を持たせることができるでしょう。
1-1. 「誰も信頼しない」ゼロトラストの基本原則
ゼロトラストの核心となる基本原則は「Never Trust, Always Verify(決して信頼せず、常に検証せよ)」です。この考え方は、一見厳しく聞こえるかもしれませんが、実際には「適切な人に適切なリソースへのアクセスを、適切な方法で提供する」という合理的なアプローチです。
この原則に基づき、ゼロトラストでは以下の3つの要素が重視されます。
- アイデンティティ検証:ユーザーが本当に正規のユーザーであるかを厳格に確認
- デバイス検証:アクセスに使用されるデバイスのセキュリティ状態を評価
- アクセス制限:必要最小限のアクセス権限のみを付与する「最小権限の原則」
中小企業のIT責任者として重要なのは、これらの原則をすべて一度に実装しようとするのではなく、自社の状況に合わせて段階的に導入していくことです。例えば、まずは多要素認証の導入から始め、その後デバイス管理やアクセス制御を強化していくアプローチが現実的です。
ゼロトラストの基本原則を理解することで、「社内だから安全」という固定観念から脱却し、より実効性の高いセキュリティ対策を講じることができます。経営層に説明する際も、「外部からの攻撃だけでなく、内部リスクにも対応できる体制づくり」という観点で説明すると理解を得やすいでしょう。
1-2. 従来型セキュリティの限界
従来型セキュリティの核心は「境界防御」というコンセプトにあります。これは城と堀のような構造で、社内ネットワークを外部から守るファイアウォールを設置し、一度内部に入れば比較的自由に社内システムにアクセスできるという考え方です。しかし、このアプローチには重大な限界があります。
従来型セキュリティの主な限界点は以下の通りです。
- 内部ネットワークを無条件に信頼するため、一度境界を突破されると被害が拡大しやすい
- クラウドサービスの利用やテレワークの普及により、「内部」と「外部」の境界が曖昧化
- 内部不正やマルウェア感染後の横展開攻撃に対して脆弱
- VPNによる接続は、すべての社内リソースへのアクセスを許可する傾向がある
中小企業のIT責任者として注目すべきなのは、これらの限界が特に現代のハイブリッドワーク環境で顕著になっていることです。社員が自宅やカフェからノートPCで社内システムにアクセスする状況では、従来の境界防御だけでは十分な保護を提供できません。
ゼロトラストへの移行は、この境界防御モデルからの脱却を意味します。必ずしも既存のセキュリティ対策をすべて置き換える必要はなく、段階的に従来の境界防御を補完・強化していくアプローチが現実的です。限られた予算内で効果を最大化するためには、リスクの高い領域から優先的に対応していくことが重要でしょう。
1-3. ゼロトラストの動作原理
ゼロトラストセキュリティの核心となる「常時検証」の仕組みは、従来のセキュリティモデルとは根本的に異なる動作原理に基づいています。
ゼロトラストでは、システムへのアクセスが発生するたびに以下の3つの要素を継続的に検証します。
検証項目 | 検証内容 | 具体例 |
---|---|---|
ユーザー認証 | 本人確認 | 多要素認証、生体認証 |
デバイス検証 | デバイスの安全性 | OS更新状況、マルウェア対策 |
コンテキスト評価 | アクセス状況の妥当性 | 位置情報、時間帯、アクセスパターン |
この常時検証の仕組みにより、例えば「通常とは異なる場所や時間帯からのアクセス」「未知のデバイスからのログイン」「普段とは異なる振る舞い」などを検知し、リスクがあると判断された場合には自動的に追加の認証を要求したり、アクセスを制限したりすることが可能となります。
中小企業のIT責任者として重要なのは、この常時検証をすべての領域で一度に実施するのではなく、最も重要な情報資産から段階的に適用していくことです。例えば、顧客データや財務情報など機密性の高いシステムから優先的に対応し、徐々に範囲を広げていくアプローチが現実的でしょう。
常時検証の仕組みは一見すると煩雑に思えるかもしれませんが、適切に設計されたゼロトラストシステムでは、ユーザー体験を損なうことなくセキュリティを強化できます。経営層への説明においても、「業務効率を維持しながらセキュリティリスクを低減できる」点を強調すると理解を得やすいでしょう。
2. 今なぜゼロトラストが必要なのか?導入が求められる3つの背景

ビジネス環境は急速に変化しています。オフィスに出勤して決まった端末を使って仕事をする時代から、場所を選ばず多様なデバイスでいつでも仕事ができる環境へと移り変わっています。この変化に従来のセキュリティ対策が追いついていないことが、ゼロトラストが注目される最大の理由です。
従来のセキュリティ対策は「城郭型セキュリティ」とも呼ばれ、会社の内側と外側を明確に区別し、外部からの攻撃を防ぐことに主眼を置いていました。しかし現在は、社内と社外の境界が曖昧になり、社内ネットワークが必ずしも安全とは言えない状況に変化しています。
また近年、サイバー攻撃の手法も高度化しており、社内に侵入されてしまった後の対策(内部対策)の重要性が増しています。従来の「入口で防御する」という考え方だけでは、現代のセキュリティリスクに対応できなくなっています。
このような背景から、「誰も信頼せず、常に検証する」というゼロトラストの考え方が生まれ、多くの企業で導入が検討されるようになりました。
2-1. テレワーク普及による社内外の境界の曖昧化
コロナ禍を経て、テレワークやリモートワークが一般的な働き方として定着しました。このような働き方の変化により、セキュリティ環境にも大きな変革が求められています。
テレワークでは、社員が自宅や外出先から会社のシステムにアクセスするため、従来の「社内は安全、社外は危険」という区分けが成立しなくなりました。また、社員が使用する端末や接続するネットワークの安全性を会社が完全に管理することが難しくなりました。
特に懸念されるのは、個人所有のデバイス(BYOD:Bring Your Own Device)の業務利用です。社員の私物端末は会社の管理下にないため、セキュリティソフトの導入状況や更新状態が不明確であり、マルウェア感染のリスクが高まります。
このように社内と社外の境界が曖昧になった現在、アクセス元の場所や使用デバイスに関わらず、すべてのアクセスを信頼せず検証するゼロトラストの考え方が不可欠となります。
2-2. クラウドサービス活用によるデータ管理の変化
企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進に伴い、クラウドサービスの利用が急速に拡大しています。これは企業データの保存場所が、従来のオンプレミス環境から外部のクラウド環境へと大きくシフトしていることを意味します。
クラウドサービスを活用することで、企業は場所を問わないデータアクセスや柔軟なリソース拡張などのメリットを享受できますが、同時にデータの保管場所が物理的に社外に移行するため、新たなセキュリティ課題も発生します。
特に複数のクラウドサービスを併用するマルチクラウド環境では、各サービス間でセキュリティポリシーの統一が難しく、データがどこにあるのか把握しにくくなります。また、クラウドサービスへのアクセス権限管理が不十分だと、意図しない情報漏洩リスクが高まります。
このような状況では、データの所在に関わらずアクセスする主体の検証を厳格に行うゼロトラストの考え方が、新しいデータ管理の基盤として重要性を増しています。
2-3. 内部不正やマルウェア感染のリスク増大
サイバー攻撃の手法は年々巧妙化しています。特に近年増加しているのが、標的型攻撃と呼ばれる特定の組織や個人を狙った攻撃です。
こうした攻撃では、メールに添付された悪意あるファイルやリンクを社員が不注意で開いてしまうことで、マルウェアが社内ネットワークに侵入します。一度侵入に成功すると、攻撃者は社内システム内を自由に移動し、重要情報を窃取することが可能になります。
また、意図的な内部不正のリスクも無視できません。従業員による情報持ち出しや、退職予定者による顧客データの持ち出しなど、内部関係者による情報漏洩のケースも後を絶ちません。
従来の境界防御では、社内に侵入された後の対策が不十分でした。一方、ゼロトラストでは社内外問わずすべてのアクセスを検証するため、内部不正やマルウェアの活動を早期に検知し、被害を最小限に抑えることが可能です。
3. ゼロトラストに向いている企業と向いていない企業の特徴

ゼロトラストセキュリティは、すべての企業に一律に適しているわけではありません。企業の特性や業務形態によって、導入効果や必要性は異なります。まず、ゼロトラストに向いている企業の特徴は以下の通りです。
テレワークやリモートワークを積極的に推進している企業は、社内外の境界があいまいになるため、ゼロトラスト導入の効果が高いでしょう。また、多数のクラウドサービスを利用している企業や、グローバルに事業展開し拠点が分散している企業も好適です。
さらに、医療や金融など、取り扱う情報の機密性が高い業界や、過去にセキュリティインシデントを経験した企業は、ゼロトラストによる厳格なアクセス制御のメリットを享受できます。
ゼロトラストに向いている企業 | ゼロトラストに向いていない企業 |
---|---|
リモートワーク中心の企業 | 単一拠点の小規模企業 |
クラウドサービス活用企業 | オンプレミス環境のみの企業 |
機密情報を扱う業種(金融・医療等) | 情報資産の価値が低い企業 |
グローバル展開している企業 | IT予算・人材が極めて限られる企業 |
DX推進に積極的な企業 | レガシーシステム依存度が高い企業 |
一方、ゼロトラストに向いていない企業としては、拠点が1つでオンプレミス環境のみで運用している小規模企業や、IT予算やセキュリティ人材が極端に限られている企業が挙げられます。また、既存のレガシーシステムへの依存度が高く、短期間での刷新が難しい企業にも、導入ハードルが高いと言えるでしょう。
4. ゼロトラスト導入のメリット・デメリット
ゼロトラストセキュリティモデルの導入を検討する際、そのメリットとデメリットを正しく理解し、段階的な実装アプローチを計画することが重要です。特に中小企業のIT責任者にとって、限られた予算内での効果的な導入は大きな課題となります。
ゼロトラストは単なるツールの導入ではなく、従来の「内部は安全」という前提を捨て、すべてのアクセスを検証する体制へと移行するためには、メリットとデメリットを天秤にかけ、自社に適した導入計画を立てる必要があります。セキュリティ戦略そのものの転換を意味します。
テレワークの普及やクラウドサービスの活用が進む現代のビジネス環境において、ゼロトラストは単なる選択肢ではなく、ビジネスを守るための必須の考え方になりつつあります。しかし、一度にすべてを実装するのではなく、段階的なアプローチで着実に移行していくことがポイントです。
ここでは、ゼロトラスト導入の具体的なメリットとデメリット、必要となる技術要素、そして中小企業でも実践可能な段階的導入ステップについて詳しく解説します。
4-1. 【メリット】セキュリティ強化と業務効率化の両立

ゼロトラストを導入することで得られる最大のメリットは、セキュリティの強化と業務効率化を同時に実現できる点です。一見相反するように思えるこの2つの要素ですが、ゼロトラストの適切な実装により両立が可能になります。
まず、セキュリティ強化の面では、すべてのアクセスが検証されるため、マルウェア感染や内部不正によるデータ漏洩リスクが大幅に低減します。従来のVPNのように一度認証すれば社内ネットワークに無制限にアクセスできる環境と比べ、各リソースへのアクセスが個別に制御されるため、被害の拡大を最小限に抑えられます。
一方で、業務効率化という観点では、場所や端末を問わず安全にシステムにアクセスできる環境が実現するため、テレワークやBYOD(個人デバイスの業務利用)の推進が容易になります。クラウドサービスへの安全なアクセスも確保されるため、デジタルトランスフォーメーションの加速にも貢献します。
さらに、ユーザー体験の向上も見逃せないメリットです。適切に設計されたゼロトラスト環境では、シングルサインオンや生体認証などの技術により、セキュリティを強化しながらもログイン操作の煩雑さを軽減できます。結果として、従業員はセキュリティ対策に煩わされることなく業務に集中できるようになります。
4-2. 【デメリット】導入コストと運用負担の増加

ゼロトラストセキュリティを導入する際の主な障壁となるのが、導入コストと運用負担の増加です。特に中小企業にとって、これらのデメリットは導入判断を左右する重要な要素となります。
初期投資コストは、ゼロトラスト導入の最大のハードルの1つです。IDaaS(Identity as a Service)、EDR(Endpoint Detection and Response)、CASB(Cloud Access Security Broker)など、複数のセキュリティソリューションの導入が必要となるため、一般的な中小企業で数百万円から1,000万円程度の投資が必要になることもあります。また、既存のITインフラを刷新する必要があれば、さらにコストは膨らみます。
次に運用負担の問題があります。ゼロトラストは継続的な監視と検証が基本原則のため、セキュリティポリシーの設定や例外処理、アラートへの対応など、運用管理の複雑さが増します。専門知識を持ったIT担当者が少ない中小企業では、この運用負担が大きなボトルネックとなり得ます。
さらに、従業員の抵抗も無視できない課題です。これまで自由にアクセスできていたリソースに制限がかかることで、業務効率が低下したと感じる従業員も少なくありません。
また、技術的な課題として、レガシーシステムとの互換性の問題があります。特に古いシステムや専用機器などは、ゼロトラストの前提となる認証や監視の仕組みが組み込めない場合があり、こうしたシステムをどう扱うかは大きな検討課題となります。
5. ゼロトラスト導入に必要な要素とステップ
ゼロトラストセキュリティを実現するには、複数の技術要素を組み合わせて総合的なセキュリティ対策を構築する必要があります。ここでは、ゼロトラスト実現に不可欠な5つの主要技術要素について解説します。
5-1. ゼロトラスト実現に必要な5つの主要技術要素
第一に、アイデンティティ管理と認証は最も基本的な要素です。IDaaSやシングルサインオン(SSO)、多要素認証(MFA)を組み合わせ、「誰が」アクセスしているかを厳密に検証します。
第二に、デバイス管理は、「どのデバイスから」のアクセスかを検証するために重要です。MDM(Mobile Device Management)やEDR(Endpoint Detection and Response)を使ってデバイスの状態を常時監視し、セキュリティパッチの適用状況やマルウェア感染の有無を確認します。
技術要素 | 役割 | 代表的なソリューション |
---|---|---|
アイデンティティ管理 | ユーザー認証とアクセス権限管理 | Azure AD,Okta,SmartOn ID |
デバイス管理 | エンドポイントの健全性確認 | Microsoft Intune,VMware Workspace ONE,ISM CloudOne |
ネットワークセグメンテーション | アクセス制限とトラフィック分離 | Cisco SDA, VMware NSX |
アクセス制御 | 動的なポリシーによる権限付与 | Zscaler Private Access, Akamai EAA |
継続的監視・分析 | 異常検知と迅速な対応 | Microsoft Sentinel,Splunk,FortiAnalyzer,Flowmon |
第三の要素は、ネットワークセグメンテーションです。マイクロセグメンテーションによってネットワークを細分化し、侵入者の横方向移動を防止します。これにより、一部のシステムが侵害されてもその影響範囲を最小限に抑えることが可能になります。
第四に、アクセス制御は「何に」「どのように」アクセスするかを管理します。最小権限の原則に基づき、業務に必要最小限のアクセス権限のみを付与し、コンテキスト(場所、時間、行動パターンなど)に応じて動的にアクセスポリシーを変更します。
最後に、継続的な監視と分析が不可欠です。SIEMやXDRなどを活用し、すべてのアクセスログやネットワークトラフィックを常時監視。AI/機械学習を用いて異常な振る舞いを検出し、セキュリティインシデントの早期発見と対応を実現します。
5-2. 中小企業でも実践できる段階的な導入方法
中小企業がゼロトラストを導入する際は、一度にすべての要素を実装するのではなく、段階的なアプローチが効果的です。限られた予算と人的リソースを最大限に活用しながら、着実にセキュリティレベルを高めていく方法を紹介します。
最初のステップとして、多要素認証(MFA)の導入から始めることをおすすめします。比較的低コストで導入でき、即効性が高いセキュリティ対策です。Microsoft 365やGoogle Workspaceなどのクラウドサービスであれば、追加コストなしで基本的なMFA機能を利用できる場合も多いです。社内の重要システムから順次MFAを有効化し、ユーザーにも少しずつ慣れてもらいましょう。
次に、インベントリの把握とリスク評価を行います。社内のすべてのアセット(デバイス、アプリケーション、データ)を棚卸しし、それぞれのセキュリティリスクを評価します。特に重要な情報資産や脆弱性が高いシステムを特定し、保護の優先順位を決定します。
- ステップ1: 多要素認証(MFA)の導入
- ステップ2: 資産インベントリの作成とリスク評価
- ステップ3: エンドポイント管理の強化
- ステップ4: クラウドアクセスセキュリティの実装
- ステップ5: ネットワークセグメンテーションの段階的導入
- ステップ6: 継続的な監視体制の構築
3番目のステップとして、エンドポイント管理を強化します。MDM(モバイルデバイス管理)ツールを導入し、会社支給のデバイスだけでなく、BYOD(私物デバイス)も含めた端末管理を開始します。デバイスの暗号化、自動アップデート、セキュリティ設定の統一化を図りましょう。
続いて、クラウドサービスのセキュリティ強化に取り組みます。シャドーITの把握と管理、クラウドストレージのアクセス制限、データ損失防止(DLP)ポリシーの設定などを行います。特に社外からのアクセスが多いアプリケーションは重点的に保護しましょう。
最後に、監視・分析体制を整えます。中小企業では高価なSIEMツールの代わりに、クラウドベースのセキュリティサービスやマネージドセキュリティサービスの活用も検討しましょう。外部の専門家の力を借りることで、限られたリソースでも効果的な監視体制を構築できます。
まとめ
ゼロトラストセキュリティは、「誰も信用せず常に検証する」という原則に基づき、テレワークの普及やクラウドサービスの活用で曖昧になった従来の境界防御型セキュリティの限界を克服する新たなセキュリティモデルです。
導入により、外部からの攻撃だけでなく、内部不正やマルウェア感染といった内部リスクへの対応力も大幅に向上します。特に、リモートワーク中心の企業や複数のクラウドサービスを併用している企業では、高い導入効果を発揮します。
ただし、導入コストや運用負担が増加するため、中小企業の場合は一度にすべてを導入するのではなく、多要素認証やエンドポイント管理など、優先度の高い対策から段階的に実施していくことが重要です。こちらの解説動画をご視聴ください