
すでに多くの企業で「業務効率化」に向けた取り組みが実施されていますが、必ずしも大きな成果を得られているとは限りません。ある程度は業務効率化に成功し、さらに「2周目の業務効率化を検討している」という企業もあれば、いまだに「社内のどこから業務効率化を進めるべきか?」を検討している企業もあるでしょう。いずれにしても、正しい手法や手順を取らなければ、業務効率化が効果を発揮することはありません。この記事では、業務効率化の手法、正しい手順、利用するツールなどについて事例を交えて説明します。
業務効率化の目的と手順
業務効率化とは、業務、つまり仕事の遂行を効率化するための施策です。生産性が向上し、時間的・費用的なコストが削減されることにより、利益の増大が期待されます。大きく分けると、業務効率化は次の2種類に分類できます。
- 部分最適化:各部門で行われる業務効率化
- 全体最適化:全社的に行われる業務効率化
大きな効果を得るには、全社横断的な業務効率化、つまり全体最適化が不可欠です。
具体的に何を効率化するのか
業務効率化を進めるには、「ムリ」、「ムダ」、「ムラ」を見つけ出して、削減していく必要があります。

- ムリをなくす:仕事量やスケジュールをスリム化して社員の負担を減らす、など
- ムダをなくす:必要のない業務を減らす、仕事の進め方を見直す、など
- ムラをなくす:一定の人や部署への負荷の偏りをなくす、など
これらの施策により時間的・費用的なコストを削減し、生産性を向上させること、そこから利益を増大させることを目指します。同時に、従業員のモチベーションアップ、満足度の向上も期待できます。
業務効率化の手順
業務効率化には正しい手順があります。手順通りに進めないと逆効果になってしまうケースもあります。
- 業務内容の可視化と分析
現状の業務フローを細かく分割して可視化し、実態を把握します。ポイントは、業務ごとの作業時間と作業量です。 - 対象業務の決定
可視化した業務の中から、業務のボトルネックとなっているプロセスを発見します。業務効率化の対象となるものです。 - 対象業務に合わせて改善策を考える
それぞれの業務について、業務効率化を実現する方法を考えます。ここでは業務改善のフレームワーク「ECRS(イクルス)の原則」を使うことが多いようです。次の4つの視点から業務効率化の対象と対策を見極めます。- Eliminate(排除):現状の業務フローから不要なプロセスや慣例を排除する
- Combine(結合と分離):似た業務をまとめる、または分業を進めて効率化する
- Rearrange(入れ替えと代替、交換):業務フローを見直し、プロセスの入れ替え、担当者や部署の交代などにより効率化を図る
- Simplify(簡素化):作業の標準化、簡素化を行うツール・システムの導入、アウトソーシングなども効果的な手法です。
- 対策の実行
改善策に従って新しい業務フローを実行します。 - 検証と評価
一定の期間が経過したあとで効果を検証します。ポイントは次の2点です。- 新しいフローで業務はうまく進んでいるか、作業精度が低下している部分はないか
- 効率化の効果はどの程度か、処理時間やコストは変化したか
予想していたほどの効果が上がっていなければ、改善策を修正するか、別の改善策を考えます。
業務効率化の手法
業務効率化にはいくつかの手法がありますが、ここでは3種類に分けて説明します。
ムリの排除を進める手法
ムリをなくすには、次のような手法があります。

- ITの導入・活用
文書作成や管理、コミュニケーションをIT化してくれるツールやシステムを導入します。 - アナログ作業の自動化
紙の帳票処理をIT化します。Excelのマクロ処理でも大きな効率化になりますが、受注から決済までを一括してシステム化すれば、作業の大部分を自動化できます。 - クラウドサービスやシステムの導入
クラウドサービスやパッケージソフトを導入して、会計、総務、営業事務などのバックオフィス処理を自動化します。 - アウトソーシングやシェアードサービスの導入
人員やリソースをメイン業務に注力し、それ以外の業務を外注化または集約することで、利益増大を図ります。アウトソーシングは、業務の一部を外部の専門家に委託する方法です。シェアードサービスはバックオフィス部門を集約して全社で共有する方法で、全社的な業務効率化を図ります。 - 職場環境の整備
働きやすい環境を整えると、スムーズに業務を遂行できます。職場のレイアウトの変更、評価方法の見直し、長時間労働の是正などが代表的な方法です。
ムダの排除を進める手法
ムダをなくすには、次のような手法があります。
- ルーチンワークの自動化
定期的に繰り返す処理、定型業務やルーチンワークなどをIT化し、自動化を進めます。 - フォーマットの統一
よく使う文書は書式を統一し、テンプレートを作成します。 - 業務マニュアルの整備
業務マニュアルを作成して作業を標準化することで、説明の手間を省きます。 - ムダな会議の廃止
定例会議、連絡会議など、無駄な会議を減らします。 - ペーパーレス化の促進
処理の自動化や会議の削減によりペーパーレス化を進めることで、コストと作業時間を大きく減らします。
ムラの排除を進める手法
ムラをなくすには、次のような手法があります。
- 繁閑期の明確化
繁忙期と閑散期を把握し、繁忙期の仕事をできるだけ閑散期に移すことで、業務のムラを減らします。 - 決裁者の分散
決済者が1人しかいないと業務のボトルネックになるので、決裁者を増やして業務の偏りを減らします。 - 社員教育
各社員がスキルアップすることで、業務をよりスムーズに進められるようになります。
業務効率化を進めるツール
業務効率化を進めるために、さまざまな部分でシステムやツールが使われています。
コミュニケーションツール
コミュニケーションツールを活用すると、確実な連絡や情報共有が可能になります。相手との関係性、伝える内容に応じてツールを使い分けます。

- チャットツール
短文でスピーディーなやり取りに向いています。スケジュールやタスク管理ツールと連動させることも可能です。 - グループウェア
社内の情報共有やコミュニケーションを行います。タイムカードやスケジュール管理など、複数の機能を組み合わせたものが一般的です。 - オンライン会議システム
支社や顧客と、顔を見ながらコミュニケーションを交わすことができます。 - キャプチャソフトや録画ソフト
PCの画面をキャプチャしたり、動作を録画したりすることで、よりわかりやすい情報共有が可能となります。
RPA
RPA(Robotic Process Automation)は、事務作業をソフトウェアにより自動化してくれるシステムです。バックオフィス部門の仕事の多くを自動化することができます。
ファイル共有ツール、情報共有ツール
さまざまな情報共有サービスがあります。ファイルストレージや社内Wikiなど、用途に応じて使い分けることが可能です。
社内のファイル共有はもちろん、社外の人とも安全にファイル共有を行う方法やサービスについては、「 セキュアなファイル共有方法とは? 社外の人とも安全にやり取りできるおすすめのサービスも紹介 」で解説をしているので、あわせてご覧ください。
営業支援ツール
外回りや帳票処理が多い営業活動をサポートするために、さまざまなツールやシステムが提供されています。
- SFA(営業支援ツール)
- CRM(顧客管理システム)
- 名刺管理ツール
- MAツール(マーケティング・オートメーション)
その他
そのほか、次のようなツールやシステムが業務効率化に活用できます。
- iPaaS
異なるアプリケーションやシステムを連携してデータを統合し、業務自動化を実現するサービスです。 - バーティカルSaaS
必要な機能だけを選択して利用できるクラウドサービスです。 - ワークフローシステム
申請や承認、決済などの手続きをシステム化してくれます。
業務効率化ツールの導入事例
続いては、ツールやシステムの導入により業務効率化を実現した例をいくつか紹介していきます。
PHONE APPLI PEOPLE
PHONE APPLI PEOPLEは、社員やお客様情報などをクラウド上で一元管理できるWeb電話帳クラウドサービスです。株式会社ファミリーマートでは、本社オフィスをフリーアドレス化する際に、PHONE APPLI PEOPLEを導入されています。その結果、社員の連絡先と居場所がすぐに把握できる体制が確立され、社内外どこにいても連絡が取れるようになりました。部署を越えたコミュニケーションも活発になっています。付属の名刺管理機能を使って、取引先の情報を容易に共有することも可能です。
PHONE APPLI PEOPLE/PHONE APPLI PLACE導入事例
WinActor

WinActorは、PCで処理する定型業務を自動化してくれるRPAツールです。掛川市役所では、コンビニ収納における入金処理事務にWinActorを活用する実証実験を行い、年間440時間の作業時間短縮という大きな結果を得られました。それをもとに庁内でRPA対象の業務を募集したところ、さまざまな部署から導入希望が寄せられました。現在は、IT担当部局や行財政改革担当部局のサポートのもと、RPAの導入が進んでいます。その結果、職員の負担が軽減され、市役所全体の生産性が向上し、行政サービスの質が向上する、という成果につながっています。
DataSpider

DataSpiderは、多様なシステムやファイル形式が混合した環境でも、データ連携を容易に実現する統合開発プラットフォームです。ITソリューションを提供する伊藤忠テクノソリューションズ株式会社では、データ連携に社内向けのポータルシステムを使用していましたが、状況によっては「煩雑な処理をこなしきれない場合がある」という問題を抱えていました。この問題の解決に向けてDataSpiderを導入したところ、新しいデータ連携システムの開発が不要になり、通常の開発工数を削減することができました。
まとめ:業務効率化の効果を上げるには自社に合った手法や
ツールの導入が必要
業務効率化に向けて、多くのベンダーからさまざまな手法やツールが提供されています。しかし、ツールを利用すれば必ず効果が出る、とは限りません。自社に合わない手法やツールを選択すると、あまり効果を得られないケースもあります。まずは、自社の業務内容や実態をしっかりと分析し、そのうえで「自社に合った手法は何か」、それを実現するには「どんなツールが最適か?」を見極めていく必要があります。
業務効率化に不可欠なツールやシステムを効果的に導入したい場合は、ノウハウのあるベンダーのサポートを利用するのが効果的です。CTCエスピーでは、さまざまな業務効率化に関するソリューションをご提案しています。ご要望に沿ったソリューションを提供するだけでなく、「当社に必要なツール、システムは何か?」というご相談も可能です。業務効率化に向けてツールの導入を検討されているなら、ぜひお問い合わせください。