コロナ禍で、一躍注目を集めるようになった「ワーク・イン・ライフ」(※1)というキーワード。
実はCTCエスピーでは、世の中にまだ「ワーク・ライフ・バランス」という言葉すら定着していなかった時代から、「ワーク・イン・ライフ」という概念を掲げ、社内の制度改革に取り組み続けています。
CTCエスピーが、社会に先駆けて「ワーク・イン・ライフ」という考え方で制度改革に取り組むようになったのはなぜなのか? どのように取り組んでいったのか? そして今後何を目指していくのか?を、CTC本社、CTC事業グループなどで「改革の風」を起こし続けてきたキャリアを持つCTCエスピー人事総務部部長 岡田俊樹に聞きました。
※1:「仕事も、家族や友人、趣味、休み、健康、学びなどと同じように、人生の中の一つとして捉えよう」という考え方
仕事は、人生を充実させるための大切な要素の一つ。
対立する概念ではない。
「ワーク・イン・ライフ」という概念を持つようになったのは、2007年です。きっかけは、2007年に「ダイバーシティ宣言」をしたことでした。当時は、「ワーク・ライフ・バランス」という言葉が使われるようになったばかりという時代。ダイバーシティ推進メンバーの中で、年齢や性別、それぞれのバックグラウンドの違いをどう認めていくかについて議論をする中で、「ワーク・ライフ・バランス」という考え方に違和感を覚えるようになったのです。
私たちは、”ワークとライフはVSの関係ではない。仕事は人生に組み込まれているものなのだから、「ワーク・ライフ・インテグレーション(※2)と捉えるべきではないか?”と考えたのです。
※2:仕事とプライベートを対立するものと捉えず、どちらも人生を充実させるための大切な要素であるとの考えから、双方を「インテグレーション(統合)」させて生活の質を向上させよういう取り組み
さらに、コロナ禍でテレワークが急速に普及したことにより、仕事が生活の中に組み込まれるようになりました。だから、「ワーク・イン・ライフ」という言葉が注目されていると思うのですが、「ワーク・イン・ライフ」は「ワーク・ライフ・インテグレーション」と同じ概念だと考えています。
私たちは、人によって、ライフステージによって、ライフにおけるワークの比重は違うし、変わっていくものであるはずだと考えました。「キャリアパスに、一人として同じものはない。人によって、さまざまな転換点があるはず。社員ひとりひとりが、ライフを変化させながらキャリアを形成していくということに対して、会社としてどのような支援ができるのか?」を考えながら、制度を組み立てていきました。
いつでも、どこでも仕事ができる環境を。社員ひとりひとりの「ライフ」に寄り添うことを目的に、テレワークをいち早く導入。
ダイバーシティを推進する中で、「時間と場所を問わずに働けるということが、社員にもたらすものは大きい」と考え、テレワークを導入し始めました。特に、 CTC エスピーは、グループの中でも先頭を切って取り組み始めた会社です。
プラットフォームを整える上で非常に役立ったのが、 2017 年から始まった「テレワーク・デイズ(※ 3 )」に、 CTC グループとして参加したことです。数千人単位でテレワークをやってみた結果、意外とできるということもわかりましたし、さまざまな課題も見つかりました。最初に障害になったのは、通信環境です。「数千人が一気にアクセスしたことによって、本社のネットワークにつながらなくなってしまった」という会社側の問題もありましたし、社員の自宅のインターネット環境の問題で「つながらない」という事態が起こることもわかりました。
それらの課題解決に一つ一つ取り組みながら、全社的にテレワークを導入しようと準備をしていた矢先に、新型コロナウイルス感染症の拡大が起こったのです。想定していたよりも早く、全社員週 5 日テレワークという働き方を実施することになりましたが、「テレワーク・デイズ」で準備を重ねていたおかげで、スムースに移行することができました。
※ 3 :総務省、厚生労働省、経済産業省、国土交通省、内閣官房、内閣府が、東京都および関係団体と連携して実施している、働き方改革に関する国民運動
「生産性が低下」「コミュニケーションに時間がかかる」「進捗管理ができない」など問題が多発。残業時間が月10時間も増加。
オンラインコミュニケーションに関しては、コロナ禍前から全社的に Zoom を使っていたので、表面的なコミュニケーションは問題なくできました。ただ始めの頃は、議論が活発にならない、意思疎通がうまくいかないなど「やはり、顔を合わせて行う会議とは違うよね」という声は多かったと思います。また、通勤時間がなくなる分、仕事に余裕ができるかと思っていたのですが、実際には、営業を中心に、残業が月 10 時間くらい増えてしまいました。
業務効率が落ちてしまった原因の一つは、別々の場所で、お互いが見えない状態で仕事をすることによって、コミュニケーションに時間がかかるようになってしまったことです。今までなら、横を向いて声をかければすぐに済んだことが、指示を一つするにもいちいちメールを書かなければならなくなりましたし、やりとりにもタイムラグが発生するようになってしまいました。ワークフローに、紙の承認というプロセスが残っていたことも、効率が落ちてしまった原因です。テレワーク導入に向けて、インフラは整えていましたが、仕事のやり方や制度面をどうしていくのかが整理できないうちに、コロナ禍になってしまったからです。「ちょっとした会話ができない」「ちょっとした相談ができない」ということで、メンタルが落ち込んでしまった社員もいました。若い社員は、「先輩に質問ができない」というストレスを抱えるようになりました。それらのフォローをするという時間も増えました。「チームメンバーひとりひとりの状況が見えない」ということで、マネージャー層は進捗管理に苦戦するようにもなりましたね。
ITのプロ集団が自主的に課題解決に取り組んだことにより、
業務効率の向上・残業時間削減に成功。
課題解決に向け、ワークフローに関しては、全社的にシステムを導入することによって、すべてオンライン上で承認が行えるようにしました。また、当社は IT のプロ集団ですから、各部署が自主的に課題を解決するツールを探して使っています。
例えば「もっとインタラクティブな会議をしたい」という要望に対しては、オンラインホワイトボードツールの 「Miro」 を 「Zoom」 に組み込んで使うとか、「チームメンバー全員の仕事の状況を可視化したい」「もっと細やかなコミュニケーションを取りたい」という要望に対しては、ワークマネジメントツールの 「Asana」 を導入する・・・などです。自分たちが課題を解決するために、実際に使ってみてよかったものを、お客様にも提案して喜んでいただいていますね。
新型コロナウイルス感染症の拡大から約2年がたちました。試行錯誤を繰り返すことによって、オンラインで伝わることと伝わらないことの勘所や、テレワークで業務効率を上げる方法がわかってきました。それにより、残業時間を大きく削減することに成功しています。
さらなる多様性の実現に向けて
ポストコロナの「ワーク・イン・ライフ」とは
週5日テレワークという働き方を約2年間経験したことで、働き方に対する価値観が、多様になってきたと感じています。当社は、もともとCTCグループの中で一番飲み会が多い会社だったくらいで、人と会うことが大好きな社員が多いのですが、来年入社する新卒採用の人たちは、「テレワークという働き方も選択できるんだ」と、当たり前のように思っています。「多様な働き方が可能な会社だ」ということが全社員に浸透したことにより、「地方で働きたい」など、新しいニーズも生まれています。
今はまだコロナ禍なので、全員が同じ働き方を選択するしかない状況です。しかし、コロナが収束したときには、それぞれが、自分にとって一番パフォーマンスを出しやすい働き方を選択することになるでしょう。人事としては、ひとりひとりの違いを認める方向で、それに耐えられる制度・ルールを準備しようとしているところです。
コロナ禍で「全員がテレワークをせざるを得ない」という縛りから解放されたとき、それぞれがどんな働き方を選ぶのかわかりません。しかし会社としては「多様性を認めていく」ということをしっかりメッセージとして打ち出していくべきだし、それを評価などの制度としても整えていくことによって、社員ひとりひとりが実感できるようにしていく必要があると考えています。
それが、私たちダイバーシティ推進チームが、2007年からずっと挑み続けているテーマなのです。
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