イベントレポート
世界最大の放送機器展覧会「2018 NAB Show」を視察(1)
CTCSPの映像スペシャリストが毎年ラスベガスにて開催される世界最大の放送機器展覧会「2018 NAB Show(NAB2018)」を完全レポート!
2018年4月7日から12日に米国ネバダ州ラスベガスにて開催された世界最大の放送機器展覧会「2018 NAB Show(NAB2018)」へCTCSPからも数名参加し、お客様へ各社のソリューションをご紹介したり、新しいテクノロジーの視察を行ったりしてまいりました。
今回のイベントレポートでは、CTCSPの映像スペシャリスト 冨田が会場のここかしこを歩き回って得た情報を惜しみなくレポートしますので、会場の雰囲気を感じていただき、新たな放送・映像市場の流れに触れてください。
プロローグ
~技術トレンドを回想して~
CTCSP冨田です。ラスベガスで開催されたNAB Showに本年も出張してきました。私自身は11回目の出張視察となります。
2001年に初めて視察した時のことを思い起こすと、インターネットのブロードバンド化が急速に立ち上がり始めた時期で、インターネットでのビデオ配信が産声を上げようとしていた黎明期でした。動画の圧縮方式はMPEG2が主流であり、次世代の圧縮技術としてWindows Media VC-1とH.264(MPEG4 Part10)※1が提唱され始めたタイミングでもあり、その過渡期の技術としてMPEG4のエンコーダが各社からリリースされ始めていました。1995年からMPEGエンコード製品の老舗の一社であるOptibase社の製品の販売サポートを行ってきて、次世代ストリーミングの標準フォーマットになるであろうとMPEG4に注目しその最先端を進んでいたEnvivio社(当時)の日本市場における立ち上げを開始したことが思い出されます。思い返すと、当時エンコード処理はハードウェアによる処理が中心でC-Cube社が市場を席巻しておりましたが、MPEG4への移行の中でソフトウェアエンコードがじわじわと登場してきた時期でもありました。現在よく耳にするSoftware Defined Video※2の走りであったと思います。
2000年代の始めは、AppleもNABに巨大なブースを展開してQuicktimeとそのエコシステムをPRし、メディアへの本格的な取組をPRしていました。その後Appleはブース展示から撤退しますが、その当時からの取組みは現在ではインターネットストリーミングのデファクト標準となったHTTP Live Streaming※3へと進化を続けOTTビデオ配信の世界を大きく変えました。
2010年代に入ると圧縮技術はH.264が主流となり、インターネットでの映像配信(OTTビデオ)においても解像度がHD解像度へと急速に進歩を遂げ、テレビ放送と並ぶ重要なメディアに成長していきます。2010年、2011年はAdaptive Bitrate Streaming(ABR)※4技術が各社よりリリースされ、RTSPプロトコルによるレガシーな配信方式から、HTTPを用いたサービス制御へと急速に移行が進んだ時期でもあります。当時H.264を用いたABRエンコード配信を牽引したInlet社(現在Cisco)の販売サポートを行っていましたが、配信解像度の拡大、配信チャネル数の拡大要求を頂く機会が増え、性能の高さとサービス集約性の高さを実現できる製品を探しており、その中で注目したのが GPUを用いた超高性能エンコードを発表していたElemental社でした(現在 AWS Elemental社)。CTCSPは、2011年4月からInlet社の販売サポートをスタートしておりましたが、きたるべき性能要求に備えて同年9月よりElemental社の製品の販売サポートを開始します。その後、Elemental社は急成長を遂げ、OTT※5市場のエンコーダとしては第一位のシェアを獲得するに至り、CTCSPも共に映像ビジネスを成長させてきました。
2013年からは6年連続でNABに参加してきたので技術の流れを簡単にまとめました。
- 2013年:CODEC※6としてのH.265(HEVC)の訴求、次世代解像度として4K(UHD※7)の取組の訴求
- 2014年:4K訴求の拡大(実際のユースケースの紹介)、クラウドプロセッシング訴求がスタート
- 2015年:Software Defined 訴求とクラウドプロセッシングの拡大、HDR※8、ドローンの訴求が拡大
- 2016年:360度空間のVR映像、クラウド化の加速(サービスのクラウドヘッドエンド化)、映像ワークフローのIP化(SDI信号※9のIP化)、4Kワークフローの整備
- 2017年:クラウド・プロダクション、コンテンツとしてのライブ配信ビジネスとそれを支える技術の訴求、4K/8K VR、次世代技術としてのAI活用
インターネットでの高解像度、高画質、インタラクティブな映像配信サービスの拡大基調と、映像の撮影以降のプロセスのIP化によるワークフローの効率化が変化として急激に起きていることを感じられます。
それでは2018年は、どんな変化が起きていたのでしょうか?
- Windows Media VC-1とH.264(MPEG4 Part10):
動画データを圧縮するために使われる、コーデックと呼ばれるプログラム・技術 - Software Defined Video:
これまでハードウェアが主流だった映像機器を仮想化技術を用いて抽象化し、ソフトウェアによって操作しようという考え方 - HTTP Live Streaming:
米アップルによって開発されたライブ動画配信プロトコル。HLS形式。 - Adaptive Bitrate Streaming(ABR):
視聴端末や視聴環境により自動的に最適のビットレート値に切り替わる機能で、高画質でありながら安定した配信を実現することができる。 - OTT:
インターネット回線を使ったテレビ放送や映画配信サービス - CODEC:
映像などをコンピュータで扱うデータ形式に変換する機器や機能 - UHD:
Ultra-High Definitionの略。解像度が高く超高精細。 - HDR:
High Dynamic Rangeの略。従来のSDR(スタンダードダイナミックレンジ)に比べて明るさの幅(ダイナミックレンジ)を表現できる。 - SDI信号:
Serial Digital Interfaceの略。ビデオ信号伝送規格で標準画質の非圧縮デジタル映像とデジタル音声をBNCコネクタと同軸ケーブル1本で伝送する。
NAB2018会場&ブース紹介
例年通り、ラスベガス・コンベンションセンター(ノース、セントラル、サウス・アッパー、サウス・ロワー)で開催されたNAB2018は、出展者数=1700社超、来場登録者数=102,000人超、参加者の国と地域は160と巨大なイベントでした。
放送とそれに関連する技術や製品の展示が所狭しと並びますが、NABは各企業がその年に取り組む技術テーマを先出してPRしている印象があります。NABと双璧をなすイベントで秋にアムステルダムで開催されるIBCで各企業はその成果を展示・紹介する流れというように考えると、トレンドをつかむうえではNABは非常に大切な機会であると私は感じています。
まずは、私が撮影してきた会場の写真をご紹介します。
ノースホール
セントラルホール
サウスホール
続き「3. NAB2018 気になるトピック」は、次回「世界最大の放送機器展覧会「2018 NAB Show」を視察(2)」へ
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